教職員や学生が5万人以上在籍し、3,000台近くのサーバ群が分散して運用されている京都大学のネットワークとセキュリティ管理は、学術情報メディアセンターの教員が支援しています。しかし、規模はもちろんのこと、研究機関という特殊環境でセキュリティを維持することは難しく、特に近年増加するスパムは悩みの種でした。その中で、マカフィーのMessaging and Web Security製品を選択した理由や利点は何だったのでしょうか。同センターのネットワーク研究部門の准教授、高倉弘喜氏にお話を伺いました。
そこで、平成14年に管理システムを入れるにあたり、同センターはグローバルIPアドレスを割り当てるメールサーバやWebサーバの登録申請を実施しました。その結果、3万台近くあったサーバは3,000台にまで激減しました。さらには研究用と業務用にプライベートネットワークを分け、学部や研究室単位でVLANを切り、VLAN間の通信を禁止することでウイルス拡散の防止やセキュリティ対策の強化を図りました。「以前は個人のPCにグローバルIPアドレスが割り当てられてしまい、それがネットワークに接続した途端、クラッキングされるという被害もありました。そうした問題を減らせたことは快挙です」と、高倉氏は当時の苦労を振り返ります。 それでも、近年のスパム増加は悩みの種でした。教員3名、技術スタッフ4名、外注業者の少人数体制では対応しきれない、そう感じた高倉氏はスパム対策製品の導入を決断したのです。 早速、セキュリティ各社から評価機を取り寄せ、1ヶ月間の性能評価を実施しました。「導入の申請をした当初は、スパム判定をする為に、メール本文を解析するスパム製品に対して個人メールを含めて内容を読まれることに抵抗を示す人が多かったのですが、それ以上にスパムのせいで読むべきメールが読めない状況に苦しむ人がいて、それが導入への決め手となりました」(高倉氏)。 評価はあらゆる角度から実施されました。中でも、一番重視したポイントは誤判定率でした。例えば、企業であればロシア語のメールが来たら弾くといった言語によるフィルタリングも可能です。しかし、研究機関では多種多様な言語が使用されており、そういった設定を無効にしなければなりません。「スパムを見逃すことは仕方ないことです。ただ、正規のメールをスパムと判断する誤判定だけは絶対に回避したいというのが必須事項でした」と高倉氏は説明します。 こうして、数々の検証を行った結果、設定マニュアルを読まずに設定でき、しかもデフォルト設定でも誤判定がないMessaging and Web Securityを採用することになりました。高倉氏は、1日に2,000通近くのメールを受け取り、そのうち読むべき正規のメールは100通程度と言います。今は、「スパムがないことに慣れてしまい、スパムの脅威はなくなったと誤解されることや、Messaging and Web Securityが効果を発揮しているからこそスパムが届かないことを意識してもらえない」ことが心配であり、不満と言います。
では、Messaging and Web Securityの良い点は何でしょうか。その質問をしたところ、しばらく考えた後に高倉氏は「何も印象に残らないところ」と答えました。「というのも、Webでクリックしていけば設定は終了するし、管理面でも苦労した覚えがないのです」。ですが、こうした当たり前のことが当たり前にできるということは、研究者として実はとても大変であることを知っていると高倉氏は付け加え、「拍子抜けするほど簡単」であることはすごいことと評価しました。 このほか、メールアドレス数が250以上だとライセンス料が上がらないコスト体系や、交換部品が1日以内に取り寄せられる点、ミドルレンジ以上の上位機種でRAID構成を組めることなど、いくつかのメリットを挙げました。「交換部品の取り寄せやRAIDの構成は、障害対策として重要です。特にメールはディスクへの書き込みが多いので、ディスクはどうしても壊れやすくなります。RAIDを組んで、障害時にはディスクを素早く交換して復旧できることは、運用コスト面でも嬉しいです」(高倉氏)。 もっとも、京都大学にはSendmailの神様と言われている中村素典氏が在籍するなど、ソフトウェアやメールの専門家がいる中でアプライアンスを導入することに、以前は抵抗があったと言います。また、中身がブラックボックスであるため、問題が発生したときに何が起きたか確認できないというジレンマもあります。しかし、その専門家がパーフェクトな設定を行っていても、必ずしもその人が未来永劫キャンパスにいるとは限りません。詳細な設定の引き継ぎがないままサーバが放置されることは、さらに問題です。「以前は実験的要素があったので許容されていましたが、誰もが使う情報インフラとしてネットワークを利用する現在、それは許されません。学部内の手続きシステムも電子化されており、誰もが簡単に管理できることは重要だと思います」(高倉氏)。
スパム対策が徹底された今、今度は全学部の検疫認証システムの構築計画を立てていると高倉氏は言います。大学の正式なIDを持っている人に対して検疫を実施するようなシステムで、「Messaging and Web Securityにも、メールアドレスを入力すると、未登録の場合はユーザー認証とパスワードを設定するという機能があり、魅力的に感じています」と評価しました。(高倉氏)また、検疫のバリエーションもさまざまで、簡単にシステムを組める点も優れているとメリットを挙げました。 検疫認証システムを導入するには、まだ解決すべき多くの課題があり、時間はかかると高倉氏は言います。巨大かつ成長を続けるネットワークの運用管理に終わりはありません。